業務シナリオ

現物データによる生産ラインの動的管理


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省略名 1106-1
状態 完了
カテゴリ 工程連携 (10002)
工程間でデータ形式がそろえば
作成日 2015年8月5日
作成ワーキンググループ 現物データによる生産ラインの動的管理

現状と課題

一般的に生産方式は見込み生産と受注生産に大別されるが、実際の工場オペレーションにおいては2つの生産方式が混在している場合があり、年間を通じた機種別の生産数量変化によりスループットを最大化できる生産方式は都度変化していくのが実態である。しかしながら、刻々と変化する顧客要求に応じて、最適な生産プロセスを構築していくことは容易ではなく、生産技術者や製造の暗黙知により、現実解が決められていることが多い。

 年次・月次の生産計画に加え、日々変化する個別オーダや特急品といった顧客要求に対し、現実の生産ラインで対応可能な能力の間には、品質・コスト・納期の観点においてギャップが存在する。工場の生産管理は新たな要求や要求の変更に基づき、合理的に生産できる初期プランニングと、プランニングの変化に応じて、どの生産ラインで生産するか、どの設備で生産するかの初期スケジュールを作り上げる役割を担う。製造は工場の生産進捗、設備稼働、検査データ、作業データ等の状況変動に応じて、どの生産ラインで生産するか、どの設備で生産するかのスケジュールを逐次、他部門との調整も加えながら変更する。短納期の注文や、仕様変更によって、早急に対応すべき製造オーダなどが発生した場合に、人や設備がボトルネックとなって生産が混乱し、プロセス全体のパフォーマンス低下を招くことがある。


解決手段

市場の不確実な状況変化に対して、ボトルネックとなる設備や生産ラインのバッファの設定やラインの効率的な割り振りの変更などをより迅速・柔軟に行うため、現場からのリアルタイムデータと市場からの要求データを動的に管理する仕組みが有効である。設備に関しては、新たな設備の場合、あらかじめIoT機能として、さまざまなデータを取得できるインタフェースを備えたものを選び、実際の設備稼働時に、時々刻々と発生するデータを蓄積していく。また、既存設備の場合や、直接データが取得できない部品や仕掛品の場合には、別途外付けのセンサやメモリ等で取得できるさまざまなデータを記録し蓄積する。さらに作業者の稼働状態もCPSで蓄積し、設備と作業者が一体となった生産システムとして、統合管理する。

 ここで、設備稼働データは、稼働条件や作業者、時間やロット、治具、工具などさまざまなデータを関係づけて、ビックデータとしてデータベースに蓄積する。設備の性能データ、故障データ、製品やロットの品質データ、作業能率なども別途データベースに蓄積しておき、部品の交換、定期保全における検査項目および結果なども蓄積する。加えて協力関係にあるサプライヤーや外注加工先の能力データも蓄積する。これらのデータは、できるだけ加工せずに、そのままの形で蓄積するが、タイムタグや関連するデータについてのリンク情報、連結情報などを合わせて記録しておくことで、意味を抽出しやすくしておく。

 測定または記録すべきデータの種類や項目は、それぞれの項目の感度や重要度によって、項目そのものを追加したり削除したりする。取得したデータは、工場内のデータベースにローカルに蓄積してもよいが、クラウド上で保存することで、データのストレージサイズの制約や、解析のためのCPUパワーの制約が大きく緩和される。プライベートクラウドで、データのアクセスも限定することで、セキュリティも確保する。こうして得られたビックデータと、市場からの要求データをクラウド上の超並列シミュレーションシステムに入力し、生産プランニングの最適化を行うメソッドを準備して動的最適化型生産を実現し、制約条件やサブゴールを定量的に算出し、見える化するともに生産ラインへ作業指示を出すようにする。


目指す姿

市場要求データを使って、合理的に生産できはずという仮説を週次レベルでプランニングする。生産ラインから得られるビックデータを活用して、日次レベルで実体を見ながら生産計画、保全計画実行プランを作り上げる。また、設備稼働状況に応じて、時間レベルでどのラインに生産を割り振るか、どの設備で生産するか、内外製比率をどうするかの実行プランをアップデートし続けることで理想とする生産ラインの状況を維持する。

 対象となる設備や工場が単独でデータを収集するのではなく、同様の生産モデル、または類似した設備をもつ複数の異なる工場についてデータを集約することで、一部の工場だけでは予測しきれなかった事象が判別可能となる。また、こうした取り組みを、工場や企業を超えて行うことで、より多くのデータの母数が集まり、その結果としてシミュレーション精度が高まるとともに、生産システムの設計品質も高まる。一方、この取り組みを、設備メーカーが主体として行う場合には、設計データや生産モデルと関連づけることで、新機種などのデータ実績がないケースにおいても、類似設備のデータを活用して予測が可能となる。こうしたしくみを、サービスとして提供するとともに、新製品開発や対象製品の機能改良などにも利用する。