解説「IoTの可能性と課題」3

IoTは「モノ」のインターネットと訳されるが、正確には「Things」、つまり「コト」のインターネットである。身の回りのあらゆる「コト」が必要に応じてデータ化され、グローバルに識別可能なタグが付けられ、それがネットにより時間と場所を超えて相互につながる。これまで価値があったにもかかわらず経済的な取引が可能でなかった「コト」が次々に、ビジネスモデルの対象として躍り出てくるだろう。革命的な流れになるのは間違いない。

ドイツ政府は、ものづくりを産業競争力の基軸に据えた戦略で、新たな産業革命をリードしようとしている。産業構造が比較的日本に近いドイツは、製造業のあるべき姿を、国を挙げて議論し、行動に出た。注目すべきは、ドイツは稼ぐ力として、従来のようにモノを売ろうとしているのではなく、モノをつくる仕組み、つまり生産システムを売ろうとしているという点だ。モノである生産設備は売ったら終わりだが、生産システムとしてソフトウエアや運用管理のノウハウなどをセットで販売した場合は、その工場がものづくりを続ける限り、サービスとしての収益が得られる。

ものづくりと情報通信技術(ICT)の融合による新たなサービス化の流れは、2014年に入ってさらに加速した。米国ではゼネラル・エレクトリック(GE)など大手5社が中心となって、インダストリアル・インターネット・コンソーシアム(IIC)を立ち上げた。エジソン以来100年以上の歴史をもつGEは、さらに100年後の未来を見据え、サービス産業に向けて大胆にかじを切った。

ドイツや米国のこうした流れが、これまでのサービス産業と異なるのは、製品という「モノ」を起点としたサービスという点である。そのサービスの構成要素として必須となる製品機能をブラックボックス化することで参入障壁を高め、かつIoTのプラットフォームを使い劇的に生産性を高めることが可能となる。


モノとコトの関係モデル

図 企業内、企業間の連携モデル