解説「IoTの可能性と課題」4

ただ、現時点では課題も多い。その筆頭が標準化の問題である。「モノとモノ」、「コトとコト」がつながるためには、企業を超えた共通のルールや決め事が必要となり、それぞれに関する標準化が要求される。日本の多くの製造業は、これまで蓄積してきた膨大な技術やノウハウが社外流出することによる競争力喪失を懸念して、標準化やつながる仕組みにはおおむね閉鎖的であった。セキュリティーに関する課題も、多くが解決されずに残されている。IoT時代へ向けた世界的な変革の流れの中で、国内でも、産学が連携する形で、企業を超えてものづくりが相互につながるための仕組みを構築する動きが現れた。6月に発足した「インダストリアル・バリューチェーン・イニシアチブ(IVI)」である。

「ゆるやかな標準」というコンセプトのもとで、競争領域と協調領域の境界を、企業の垣根を越えて再定義する。協調領域においては大胆にオープン化し、相互に連携するためのリファレンス(参照)モデルを構築する。トヨタ自動車、日産自動車、三菱重工業、川崎重工業、IHI、パナソニック、日立製作所、三菱電機、富士通、NECなどが、日本発のつながる工場の仕組みをつくり、広く海外にも参加を呼び掛けていく。

日本的なものづくりの文化では、モノをつくるという「コト」を、単なる役務としてではなく、創意工夫の場として、あるいは自己研さんの場として、位置付けている部分がある。個人の能力を引き出し、成長の場を提供するという意味でのものづくりは、おそらく欧米にはない発想である。こうした人中心のものづくりが、IoT時代にも受け継がれ、グローバルに展開していくことを期待したい。