業務シナリオ

設備連携によるリアルタイムな保全管理


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省略名 1106-2a
状態 完了
カテゴリ 設備連携 (10001)
設備間でデータ形式がそろえば
作成日 2015年8月5日
作成ワーキンググループ 設備連携によるリアルタイムな保全管理

現状と課題

設備をいつでも正常な状態で稼働させることは、工場全体の操業の維持や納期順守、信頼性の向上にとって大きな課題である。故障や不具合が起こるまでに点検や部品交換などの保守を行うが、その適正なタイミングは統計的な値やメーカーのカタログ値などを参考にするものの適正である保障はない。
予防保全をさらに進めて予知保全、つまり現在あるいは過去におけるあらゆるデータをもとに、その時点あるいは将来の設備の劣化を予測し、実際の症状が出る前に対策を打つためには、高度な推論ロジックと、膨大な種類のデータが必要となる。特に、予知保全では、一見して因果関係が薄いデータも、結果的に重要なパラメータとなる可能性があり、そうした利用目的が異なる膨大なデータを取得するためのセンサの設置コストや、データの蓄積コストなど、経済的な制約もあり、これまでは現実的ではなかった。


解決手段

新たな設備の場合、あらかじめIoT機能として、さまざまなデータを取得できるインタフェースを備えたものを選び、実際の設備稼働時に、時々刻々と発生するデータを蓄積していく。また、既存設備の場合や、データが取得できない機器の場合には、別途外付けで取得できるさまざまなデータを記録し蓄積する。
設備稼働データは、稼働条件や作業者、時間やロット、治具、工具などさまざまなデータを関係づけて、ますはビックデータとしてデータベースに蓄積する。設備の性能データ、故障データ、製品やロットの品質データなども別途データベースに蓄積しておき、保全のタイミング、部品の交換、定期保全における検査項目および結果なども蓄積する。
これらのデータは、できるだけ加工せずに、そのままの形で蓄積するが、タイムタグや関連するデータについてのリンク情報、連結情報などを合わせて記録しておくことで、意味を抽出しやすくしておく。
測定または記録すべきデータの種類や項目は、まずは無作為に設定するが、ビックデータ解析の結果として、それぞれの項目の感度や重要度によって、項目そのものを追加したり削除したりする。センサの数が多く、冗長であれば、それによって一部のセンサが故障し間違ったデータを送ったとしても、その事実を他のセンサデータから推測することができるようになる。
取得したデータは、工場内のデータベースにローカルに蓄積してもよいが、クラウド上で保存することで、データのストレージサイズの制約や、解析のためのCPUパワーの制約が大きく緩和される。プライベートクラウドで、データのアクセスも限定することで、セキュリティも確保する。
こうして得られたビックデータを、さらに企業を超えて比較分析することで、企業や地域の特性なども加味した結果が得られると同時に、人工知能が立てたさまざまな仮説を、他の企業やサイトで検証することで、より普遍的で応用がきく事実や知識を発見する。


目指す姿

工場の内部で得られたビックデータから、人工知能のロジックなどを使って当初は想定していなかった因果関係や関係式などを発見し、予防保全、予知保全などに利用する。データ項目、検査項目やサンプリング方法についても、適宜みなおし、データの項目やフォーマットが異なっても解析可能なロバストなしくみとする。
対象となる設備や工場が単独でデータを収集するのではなく、統一設備または類似した設備をもつ複数の異なる工場についてデータを集約することで、一部の工場だけでは予測しきれなかった事象が判別可能となる。また、一部の工場における一部の設備の不具合のデータによって、他の工場の設備の不具合の予兆を発見するなど、工場の立地を超えた予知保全を可能とする。
また、こうした取り組みを、工場や企業を超えて行うことで、より多くのデータの母数が集まり、その結果として予知精度が高まる。この取り組みを、設備メーカーが主体として行う場合には、設計データと関連づけることで、新機種などのデータ実績がないケースにおいても、類似設備のデータを活用して予測が可能となる。こうしたしくみを、保全サービスとして提供するとともに、新製品開発や対象製品の機能改良などにも利用する。