業務シナリオ

MESによる自動化ラインと搬送系、人間系作業の統合


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省略名 1108-1
状態 完了
カテゴリ 設備連携 (10001)
設備間でデータ形式がそろえば
作成日 2015年8月5日
作成ワーキンググループ MESによる自動化ラインと搬送系、人間系作業の統合

現状と課題

多くの生産現場では、自動設備は部分的に配置され、自動化された生産ラインと生産ラインとをつなぐしくみや工程は自動化されていたり、人手に頼っていたりと、自動化レベルは千差万別である。本WGでは、完全な手作業と完全な自動化工場との中間として、まだら模様な自動化やそれをつなぐ搬送系や人間系を合わせて管理するための仕組みやシステム(製造実行システム:MES)を検討対象とする。
ここでMESを、計画進捗管理であったり、在庫管理、文書管理、品質管理などさまざまな業務システムの総称としてとらえると、それらは、個別のパッケージソフトウェアであったり、自社開発のアプリケーションであったり、Excelであったりする。それら様々な管理の仕組みによって、管理できるデータの種類や定義などが異なっており、統合的な管理を行うことが困難であるのが現状である。
特に、人間系の作業に関しては、判断や意思決定が暗黙知のまま現場で処理されている場合が多く、作業実績などは正確なデータの取得が困難であり、自動化され設備からデータが取得できているラインに比べて、実態把握およびコントロールができていない。人間系の作業については、管理強化と作業性がトレードオフとなると考えられることから、データの取得および完備性を自動化ラインと同等まで要求できず、また、人に判断および意思決定が委ねられている作業については、作業順序や実績データの内容についてもある程度の変動を許容する必要があるが、これらを合目的的に実現する方法論は確立されていない。
自動化された設備や生産ラインについても、段取り作業や稼働確認、ワークの搬送などで人間が関わる必要のある場面が多く、効率的な運用には設備やシステムと人間との適切なコミュニケーションが必要である。しかし、設備の種類やメーカ、世代によってインタフェースの形式や取得できるデータの種類や定義が異なり、それらを接続するには、専門のソフトウェア技術が必要となり、例え個別の設備を見ると様々なデータが取得出来るような場合でも、十分活用されているケースは数少ない。
このように、様々な設備や生産ライン、人間系作業などが混在した管理対象について、それらを管理するための個々のパッケージや自社アプリなどの下位システムを含め、計画進捗管理や品質管理などの目的に応じて、統合した全体システムとして捉えることが可能な仕組みの構築が課題である。


解決手段

計画進捗管理や品質管理など、MESが扱う業務領域ごとに管理のために必要な業務プロセスやデータモデルを整備し、これらのリファレンスモデルを通じてデータに基づく管理ができるようにする。これらのリファレンスモデルを介することで、生産に関わる工程が自動設備であろうと人間系作業であろうと計画や実績に関わるデータの適切な取り扱いができるようになり、また、様々な計画システムやMESツールと連携できるようにする。
人間系の作業については、画像解析による姿勢把握や無線ビーコンによる位置把握等、様々なセンサー類の活用や設備からの情報との連携により、作業者に大きな負荷をかけずとも、自然な作業の中で必要な情報を把握できるようにする。
設備やセンサーから得られるデータについては、様々なデータ形式に対応できるインタフェースを定義し、リファレンスモデルに位置付けて、設備の種類やメーカ、世代が異なっていたとしても、統合的にデータを取得、管理できるようにする。
このように、自動設備であろうと人間系作業であろうと生産に関わる様々な情報が大きな負担なく標準的な形式でリアルタイムに活用できるようになると、それぞれの事業者は、各自の業務に応じたスケジューリングロジックを構築し、短サイクルで計画修正を行うことで、よりロバストで効率的な生産を実現したり、設備やセンサーからの様々なデータを解析することで、予知的な保全対応を行ったり、設備と人とのより効率的な関わり方を探索したり、できるようになる。


目指す姿

個々の自動化された設備や生産ラインからのデータによって、それぞれの設備や生産ラインを個別に可視化するのではなく、それらをつなぐ搬送系や人間系作業も含め、工場全体、生産ラインや個々の設備など様々な視点から、設備や作業者の状況をリアルタイムに把握し、また、設備と人とが高度に情報を共有し、必要最低限の関わりで生産できるようになることで、より効率的な生産ができるようにする。
工場全体、生産ラインや個々の設備などの管理スケールや、計画進捗、生産性、リードタイム、品質、コスト、設備保全などの様々な視点から、事前の計画やあるべき姿と実績、実態との整合性やかい離状況がデータ上で常に把握できるようになり、問題が発生した時には早急に対応することができるようになり、業務改善にも効果的に取り組むことができるようになる。
現場で現実として起こっている事態をデータ上で把握することができるようになることで、遠隔地の工場や複数の工場の状態をリアルタイムに把握して異常時等にもコントロールすることができる他、連携する複数の工場や工程間において、前工程の進捗や品質のばらつきを効率的に連携することができるようになる。
人系作業については、設備やセンサーから得られるデータを適切なタイミングで適切に解析処理して人間に提示することによって、人間の判断や意思決定を強化したり、人間の作業や設備への関わりを効率的にすることができる。また、人間の行動や意思決定の結果をデータとして解析することよって暗黙知の形式知化が図れるようになる。
このようにデータの重要性が増してくるにつれて、不正アクセスや不正な制御から防御するネットワークセキュリティの仕組みが必要となるが、これについては主に技術的なイシューであり、業務シナリオとの連動性が薄いと考えられることから、本WGでの直接の議論対象とはせず、世の中の取り組みを参照するにとどめる。
本WGが対象とする業務を管理するためのソフトウェアや仕組みについては、業種、業態、規模、管理レベルなどによって様々であり、それぞれに適したものが既に多数存在する。上記の目指す姿は、1種類の固定的な統合ソフトウェアや厳密なインタフェース規格で実現するのではなく、個別のソフトウェアや仕組みをリファレンスモデルを介して柔軟に連携させることで、ボトムアップ的に強化、統合できる仕組みとして実現する。