業務シナリオ

設計&製造BOM連携とトレサビ管理


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省略名 1208
状態 完了
カテゴリ 設備連携 (10001)
設備間でデータ形式がそろえば
作成日 2015年8月5日
作成ワーキンググループ 設計&製造BOM連携とトレサビ管理

現状と課題

 設計BOMは設計部門が作成し管理している製品の構成情報、製造BOMはそれをもとに生産部門が作り方に関する情報を付加した情報とする。さらには、調達部品管理に用いるための調達BOM、サービスとの連携に必要なサービスBOMを定義する。一般に、設計段階において、製造上の様々な制約や諸条件までを考慮して部品構成を構築することは難しい。さらには、製品のライフサイクル内に起こりうる仕向け地や製造工場、調達先等の拡張や一新までを考慮することは不可能であるため、製造の時点で発生した細かい設計変更までを吸収して管理できるような部品表を予め構築する事は困難である。現状、新たな仕向け地展開や工場展開時に、一部部品の製造法や製造品質の差、内外製見直し、調達先変更など、一部のデータ変更のために、膨大なBOMデータ全体を新たに複製して構築し直すことも少なくない。
 昨今、グローカルな製品が増えつつあるものの、コンカレントエンジニアリング、あるいはアジャイル・マニュファクチャリングへの要求はいっそう強くなっている。そのため、製造BOMに合わせて設計変更要求を出し、事後的に設計変更が承認されることもある。場合によっては量産が開始された後でも、五月雨式に発生することもあり、こうした状況は、最終的に製造された製品の版管理、製品を構成するモジュールの版管理など、きわめて複雑な管理を強いられている。
 さらには、今後、IoTの発達によりトレーサビリティへの要求が高まるものの、そのデータをBOM上でどのように管理するかについて、統一的な見解はない。そのため、サプライチェーン全体で、トレーサビリティデータを統一的に管理できる枠組みを構築することが困難となっている。
 一方、サプライヤーの立場からは、取引先毎に設計BOMの形式が異なり、それらを自社でマージして一貫したデータとして管理するのに苦労している。ましてや、トレーサビリティに必要な設計BOMと製造BOMの双方向なシームレス連携はかなり難しい。
 以上のような状況は、調達BOMやサービスBOMにおいても同様であり、工場間や工程の「つながり」や、ライフサイクル連携を難しくしている。


解決手段

 マス・カスタマイゼーションやモジュラー設計に対応しつつも、オプション品の管理、ローカライゼーション仕様、個別事状の加工法を定義可能なBOM構造(スーパーBOM)を提案する。具体的には、設計BOMと製造BOMの間に、加工プロセスを定義するBOP(Bill of Process)を定義し、BOPを中心に、製造BOMや調達BOMへ展開する。具体的な業務プロセスの流れや、手戻りの場面を想定し、そこに必要なデータの流れを定義する。その結果、設計が見る構成と、製造側との連携がとれるしくみ(データ構造)を作ると伴に、設計変更の伝播の管理、対策の確認を可能とする。
 マスタ情報とオプション的なデータとを使い分けて、別の形式で登録することで、あえてマスタ登録しなくてもよい管理方法を模索する。特に、設計BOMに対して、製造BOMは生産する工場や拠点によって異なる場合があることを考慮に入れつつ、設計BOMの変更が製造BOMへ伝播するのは勿論のこと、製造BOMの変更も、他工場や他拠点の情報との整合を保ちながら、必要に応じて設計BOMに伝播するしくみを提案する。なお、製造BOMは、変更のつど、自動で記録され、どのロットがどの製造BOMでつくられたかはトレースできるようにしておく。
試作時の製造BOMは通常、データ化しないが、デジタル上での試作割合を増えることを想定し、試作時のBOMをそのまま量産時にモデル上で変換可能とすることも目指す。


目指す姿

 高品質と低コストの両立、ローカライゼーション、グローバル生産・調達など、競争力維持のために製品に求められる要求が厳しくなり、全てを設計側で決めることはほぼ不可能になりつつある。そのため、生産設計段階で見つかった設変要求や、生産現場側で図面やスペックを微調整する「現場合わせ」や「現地調整」が行われ、そうした結果が設計に十分にフィードバックできないことも少なくない。その場合、顕在化した課題が次の設計に活かされることがなく、同様な設計要求や現地調整が繰り返されることになる。
 このようなケースにおいて、無理に設計プロセスから再度やり直すのではなく、その結果を記録し、トレースできるようにしておき、次回の設計に活かせるようにする。この際、マスタの更新を自動で行い、更新前と更新後の両方を保持し、実際に生産され出荷された内容との整合性がとれるようにする。
 このためには、設計に軸足をおいたE-BOMに対して、生産に軸足をおいたM-BOMを設定し、工程設計を表すBOPを介して両者が連携するし仕組みとする。特に、図面ではなくレシピや加工条件(手順)によって製品特性が変化するプロセス系に近い要素をもった工程の場合、M-BOMでの構成内容をベースとして設計側のE-BOMを更新するような逆向きの仕組みを可能とし、生産側の品質追求結果を設計に活かすとともに、次回の設計改善につながるしくみとする。その結果、設計品質を向上させることで、設計を迅速、且つ、効率化していく。