業務シナリオ

中小企業の工程水平分業における企業間データ連携


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省略名 中小企業の工程水平分業
状態 完了
カテゴリ 工場連携 (10003)
工場間でデータ形式がそろえば
作成日 2016年6月14日
作成ワーキンググループ 中小企業の水平連携における技術情報の伝達と共有

現状と課題

航空宇宙・医療機器分野など高度な加工技術と品質保証が求められる部品製造を、加工技術に優れた中小企業が担っている。こうした業態には、単純な量産下請けと異なる次のような特徴がある。①個別受注生産であり、製造ロットが少量、かつリピート性がない、あるいはリピートするものの、その頻度が低い。②技術力のある中小企業が、単なる加工の請負ではなく、開発・設計要素を含んだ受託をしている。③切削加工、塑性加工、板金加工、熱処理、表面処理など、複数の企業で工程を水平分業している。④このため、企業の壁、企業内の組織の壁を越えた、技術的な意見交換と情報共有、進捗状況の共有などが、納期や品質を確保するうえで極めて重要になる。

こうした特徴は、プレーヤーとなる各企業の現場、担当者に業務推進上、モノの移動と情報伝達の不一致やタイミングのズレ等をもたらし、混乱要因、生産性の阻害要因となっている。現品は「移動のムダ」を最小化するよう、なるべく工程順に移動させたいが、このとき取引としての発注情報の経路と現物の動きが不一致になる。あるいは、技術上の意見交換や設計変更履歴の情報を、発注や、製造指示に正確に反映させることにも細心の注意が必要である。

顧客の開発プロジェクトに必要となる一連の部品が五月雨式に手配されたとき、設計・製造リードタイムが短いモノ、長時間を要するモノが、さまざま混在するときに、適切な手配順序、着手順序の判断など、全体の統制を取ることも容易でない。こうした難しさを、各社のキーマン達が経験や記憶、気配り、心配りでカバーしているのが現状である。


解決手段

発注企業、受注企業各社が、生産計画と工程進捗情報をICT、IoTを使って共有する。現在でも、発注企業が作成したEXCELによる一覧表を担当者間で受け渡すことなど、納期推進上の工夫を行っているが、この方法では、随時変化する最新の状況を複数のプレーヤーが適宜、正確に反映することは難しい。各社の製造実行システムの工程進捗データが、クラウド上の共有ITツールにデータ連携され、各社にとって必要な情報を、随時、見えるようにしたい。

また、技術情報については、設計段階での打ち合わせ議事録や、リビジョン管理された図面・仕様書の情報を、発注情報に紐づけて確実に情報伝達したい。また、製造現場において生み出される作業情報、要注意点等の情報、図面へのメモ書き情報なども、正規の図面情報と関連付けて保存し、リピート受注時の参照情報としたい。中小企業でも活用しうる部品表・製造工程情報システム、共有ファイルストレージや、SNS的なコミュニケーションシステム等が、受発注システム、生産管理システムの情報と関連付けられるプラットフォームを構築することによって解決したい。


目指す姿

中小企業が単独で、他企業との情報共有システムを構築することは、能力的にも費用面からも困難である。共同受注グループで開発する場合でも、そのグループ内だけのクローズなシステムになってしまっては、グループ外の会社とのさまざまな取引があるなかで、情報共有システムの「多画面問題」が発生しかねない。

生産管理システム(生産計画・実行管理)については、業種・業態および規模に応じて、それぞれ自社の身の丈に合うシステムを構築あるいは導入して活用すべきである。それぞれが異なる生産管理システムを利用していることを前提として、共有すべきデータの共有、連携ができなければならない。

将来めざす姿としては、①生産計画、工程進捗情報のリアルタイム共有。②想定外のハプニングに対して即時連絡をとりあえるSNS、チャット形式のコミュニケーション、③正規の図面・仕様書等の履歴管理、④議事録等の設計・開発段階のドキュメント類の共有、⑤製造情報(段取り・型治工具等)の記録と参照、⑥品質データの記録などが、企業の壁を越えて共有・連携できる情報システムである。

プラットフォームサービスの利用により、情報が各企業に正確によどみなく流れ、中小企業が圧倒的なスピード感を伴う、高度な開発型ものづくりを実現させている姿をめざしたい。