「つながる工場」インタビュー

「つながる工場」インタビュー5

【5】 あらためて、日本のものづくりは、これからどのような方向を進んでいくと予測されますか。また、「つながる」ための技術は、いかなる発展を遂げていくとお考えでしょうか。

日本のものづくりは、今後10年くらいは、このままの状況で発展していくと思います。しかし、国内でのものづくりのみに意識を集中していったとしたら、ICTによって競争環境、ゲームのルールが大きく変わったときに、不幸な転機を迎えることになるかもしれません。国内だけではなく、海外で日本のものづくりをどう展開するかを徹底的に議論し、そのための技術を蓄積していく必要があります。

まず、国内でのものづくりについては、自動化や知能化をさらに進め、先端的なものづくり、グローバル・ニッチトップのものづくりの核を育てると同時に強化していき、競争力の源泉となる知的財産のブラックボックス化をしていくための拠点として多いに活用されるべきだと思います。これは、おそらくそういった方向性になるでしょう。特に、ICTに関して、組込み系ソフトウェア技術など、ハードとソフトが融合した製品化、製品とサービスが一体となったプラットフォーム化などにおいて、戦略的で高度なものづくりにシフトしていくとおもいます。

一方、中小製造業については、雇用の受け皿としての役割りではなく、高付加価値なものづくりのための小回りのきく実働部隊として、製造業全体の機能がサービスという切り口から分節化していった形に変化していくと予想しています。つまり、より多様性、不確実性への対応力として、強い中小製造業がその存在感をさらに高めていくことができるとおもっています。さらには、「つながる化」を進めることで、海外の製造業との間での製造サービスの受託なども現実的なものとなるでしょう。

こうした国内でのものづくりと対比すると、海外、すなわちグローバルにみた場合の消費地に近いところで行うものづくりについては、つながるしくみの根っこを抑えられるかどうかで、明暗は分かれるでしょう。もちろん、マイクロソフトのOSの上で、アプリを売るといったような関係も成り立ちますが、製造業の工場のオペレーションシステム(5Sなど、ものづくりの基本的な考え方としくみ)について、一方的に受け入れるだけでは、品質の作り込みはできませんし、日本のものづくりの持ち味が生かせません。

ただし、もし、こうした工場のオペレーションシステムのプラットフォームを何らかの形でコントロールすることができれば、日本のものづくりのしかたが、広くワールドワイドに広がります。そこで実際に操作している人、その会社は日本と関係がなくても、それは日本のものづくりです。そして、結果的に、そうした日本のものづくりに根差したサービスやFA機器などの関連製品のグローバル展開も非常にしやすくなるでしょう。

こうした工場のオペレーションシステム、あるいは「つながる工場」のプラットフォームに関する技術として、ひとつは技術や知財を保護し、フェアな競争環境を実現するためのセキュリティー技術があげられます。そして、2つ目は、さまざまなモノ、データ、技術、そして知財などを異なる現場、異なる企業間でやりとりしたときのトレーサビリティ技術です。そして、3つ目は、そうしたICTによって展開されるデジタルな世界と現実がしっかり対応し、現実と同期してサイバー空間が機能するためのリライアビリティ技術だということができます。

この3つ目のリライアビリティについては、いわゆる厳格な標準を適用するのではなく、緩やかな標準としてのリファレンスモデルを、それぞれの対象領域、対象問題にあわせて提案し、合意し、改良していくかが重要です。そうした緩やかな標準を、海外の企業も交えてオープンなしくみのなかで作成していくことができるようになれば、日本のものづくりがグローバルなデファクト標準として一気にひろまると期待できます。リライアビリティのためには、つねに、標準を現実にあわせて見直す柔軟な発想が必要となります。

いずれにしても、そこでイニチアチブをとるのは、ものづくりの本質をしりつくした日本の製造業の当事者たちである必要があります。ICT企業は、そうしたあらたな世界へ製造業を導くためのイネーブラ(実現手段)として、FA機器や製造設備メーカーは、ICTを活用したグローバルなものづくりのためのデータのプロバイダーとして、実際に海外でものをつくる企業を全面的にバックアップしていかなければなりません。