解説「IoTの可能性と課題」5

さらに、こうした流れと並行して、国内においては2つの取り組みを提案したい。第1に、イノベーションの担い手である中小製造業、ベンチャー企業が、つながる仕組みを利用して、大手企業と対等に取引できる体制を構築するとともに、海外企業や海外の消費者とも直接つながるためのビジネスインフラを整備することである。国を越えたビジネス展開では、リスクやコストの問題から、中小企業はその舞台に立てずにいたが、IoTはそうした制約を一気になくせるはずである。

第2に、地方経済の活性化のために、デザインを含むものづくりの拠点の地方展開を図ることである。IoT時代では、時間と場所を超えて、関係する設計者、デザイナー、生産技術者が世界とつながることになる。こうした流れを魅力的な街づくりとセットにすることで、知的労働者が地域に愛着を感じて、ワークライフバランス(仕事と生活の調和)の観点からそこに移り住むよう働きかける。大学などの高度な研究機関とも連携し、一つの産業集積が形成されることで、個性あふれる地方の時代が到来するはずだ。

出典:西岡靖之,日本経済新聞2015年7月10日(朝刊)「経済教室」