4. 連携プラットフォームとICT利活用

サイバーフィジカル・システム(CPS)、あるいはモノのインターネット(IoT)といった用語とともに、設備や機器がそれ単体でデータを発信し、人、モノ、お金、そして情報の流れが、データとしてネットワーク上で把握できるようになりつつある。ただし、ここで決して間違えてはならないのは、こうしてデータとしてインターネットを経由して把握することができる現実は、本来知りたい現実のほんの一部であるということである。

つまり、ICT上で実現可能なバーチャルな世界と、実際のモノづくりの現場および企業活動そのものに対応するリアルな世界との関係を、常に対応づける努力をするとともに、最終的には、リアルな世界で得られた情報を加味してリアルな世界で意思決定していく必要がある。ICTは、あくまでもリアルな意思決定を補完する道具である。こうした点を考慮し、以下に「つながる工場」を実現するための連携プラットフォームの要件をまとめる。

(1)現場・現物・現実ベースのICT

すでに言及したとおり、連携プラットフォームでは、モノや人々のリアルな情報を、リアルなまま扱うことを可能とし、過度なデジタル化、ICT化を避ける。これにより、技術流出防止、人やモノの移動による経済効果、職人技能や暗黙知の醸成を図る。

(2)オープン&クローズ戦略の具現化

現在の工場の内部のしくみについて、徹底したオープン化、標準化を推進し、エコシステムを展開する。一方で、オープン&クローズ戦略により、競争領域である生産ライン内部の製造ノウハウは隠ぺいし、製造プロセスのブラックボックス化を可能とする。

(3)フェアでセキュアな連携の外部保証

試作図面や量産図面の改変、製造方法や加工条件の決定など、製造プロセス上の知的財産の部分について、その権利と責任の部分を明確にする。そして、第三者による追跡を可能にすることで、技術開発の公正な競争を促すと同時に、製造物責任も明確にする。

(4)グローバル対応と国際取引に対する支援

グローバル化、ボーダレスな取引環境に対応し、連携プラットフォームの参加企業の国や地域は問わない。製造プロセス連携が国境を越えて実現した場合に発生する為替の問題、通関の問題、知財や法務の問題などに対する取引企業の事務負担を軽減し支援する。