提言1「つながる工場」

6. ゲームのルールを変える

新しい時代の「つながる工場」のための連携プラットフォームは、まずはニッチトップ製造業、サポイン製造業など、中堅、中小製造業の新たな活躍の場を提供するだろう。しかし、同時に、大手の製造サービス企業や、デバイス系部品企業などにとって、新たなニーズと市場が生れることにもなる。さらに、製造プロセスを実行する現場が、国や地域を超えて、さまざまな立地環境で自律分散的に拡大していくことで、設備機器メーカー、工作機械メーカー、FAインテグレータといった業界にも、その経済的な波及効果が期待できる。

欧米と比較して、我が国では、生産システムを構築するFAインテグレータの需要が低く、工場をつなげるスペシャリストが育つ土壌が少ないとも言われている。大手製造業は、自社内に生産技術や設備の専門部隊がいて、生産ラインの大半は社内構築する力をもっている。これは、ある意味で、我が国の製造業の強みでもあり、一方で、「つながる工場」を実現する上での障害にもなり得る。これを機に、FAインテグレータ業界が、工場管理関連のソフトウェアなどのシステムインテグレータ、そしてコンサルタント業界などと一体となり、これまでなかった種類の連携のニーズと、海外展開などを視野に入れ、新たなグローバルビジネスを担う産業として発展する必要がある。

これからのICTのさらなる進展により、製造業の実体がますますデジタル化され、バーチャルな世界に急速に移行するとするならば、製造技術やノウハウがますます流動化し、コモディティ化し、このままでは、我が国の製造業の弱体化はさらに進むようにも思われる。しかし一方で、モノづくりは結局のところ、現地・現物・現実とのインタラクションと、人が主体的に行なうカイゼン思考の存在が不可欠であるということを我々は知っている。言い換えれば、否定的な意味ではなく、ICTの限界を理解しており、それと同時に、人間力、チーム力の重要性とその活用方法を知っているのである。

したがって、ICTへの過度な依存に走る欧米のモノづくりからは、注意深く一線を画し、あえて難しいといわれているモノづくりの実体、あるいは進化し続ける現場とICTとの融合を進めてはどうか。そしてその上で、そうしたバーチャルとリアルが一体となった日本的ものづくりの基本構成を、グローバルでオープンなモノづくりネットワークの構成要素として展開する。こうしたモノづくりの本道が、長い目でみた場合の製品の付加価値向上に寄与するということが広く社会に認知されたとき、我が国のものづくりは、新たなブローバル化、ボーダレス化の流れとともに、急速なスピードで飛躍し発展することになるだろう。

未来の工場が、地域的ハンデを超えて、その都度最適なパートナーである工場とインターネットを介してダイレクトにつながる。我が国のモノづくりの現場が、国内あるいは海外のモノづくりの現場と直接つながり、現場の技術者、技能者が、国内にいながらさまざまな地域の技術者と渡り合う。そして、そうしたコミュニティの中で、形式知だけでなく暗黙知の領域も含めて、常にイニシアチブをとり、我が国のモノづくりの優位性を発信し続けるのだ。ICTを道具として使い、エンジニア、マイスター、クリエーター、プロデューサーなどが、主体的に関わる新しいモノづくり文化を、日本から発信できれば素晴らしい。

そして、我が国の未来を考えれば、こうした活動を、連携プラットフォームとして具体化し、マーケティング戦略、知財戦略などをその内部に組込む必要がある。これにより、特に海外での活動に対応する経済的価値の還流を確実に行なう体制を整え、これからますます激しさを増す国際競争の中でのゲームのルールを、我が国に有利な形に作り変えるのである。結果として、モノづくり大国である我が国の遺伝子は、さまざまな実体社会の取り組みの中で、その形を変えながら、さらに強化され、次世代へ受け継がれていくはずである。我が国の産業競争力強化の観点からも、産学官が一体となった取り組みに期待したい。

出典:日本機械学会生産システム部門 日本的な「つながる工場」実現へ向けた製造プロセスイノベーションの提言(2014年6月)より