3. 製造業の連携モデルと標準化の課題

「つながる工場」を実現するためには、企業を超えたモノづくりの標準化が欠かせない。特に、インターネットを利活用したビジネス連携、あるいは製造プロセス連携を行なう場合、ICTとしてどのレベルのどういったデータを対象とし、何と何をつなげるべきか、といった議論を、標準的なモデルの上で、あらかじめ十分に行っておく必要がある。

この分野では、製造業のFA(ファクトリーオートメーション)と管理システム、経営システムを統合したモデルの国際標準としてIEC62264がある。そこでは、図1に示すとおり、製造業の全体をレベル1からレベル4までに分けて定義している。「つながる工場」は、他の工場あるいは外部と、どのレベルでつながるのか。


企業内、企業間の連携モデル

図 企業内、企業間の連携モデル


まず、連携を、企業内垂直連携、企業内水平連携、そして企業間連携の3種類に分けよう。現状では、レベル1、レベル2における企業内水平連携は、ICTによるところが大きく、この領域においては、国際標準を含め多くの標準化が行われている。また、レベル4の経営管理では、ERP等の情報システムによって業務連携が行われ、企業間ではEDI等のデータ連携も実現している。

こうして考えると、「つながる工場」による新たなチャレンジは、レベル3の現場管理の上下をつなぐ企業内垂直連携、企業内水平連携、そして現場管理レベルでの企業間連携となるだろう。製造業にとって、工場における製造の現場は、5Sの徹底と、カイゼン活動によるムダの徹底した排除によって、ひとつのショーケース的な位置付けともなりうる。しかし、実際には、ものづくりの現場は、多種多様な情報が行き交い、もっとも標準化しにくい対象であるともいえる。

我が国の製造現場の強みとしては、生産技術、生産準備といったエンジニアリング力があげられる。欧米では、こうしたエンジニアリングと製造オペレーションは、完全に分業化されており、製造現場におけるいわゆるすりあわせ技術が成立しない。これに対して、我が国の場合、それぞれの現場の特性、設備の特性にあわせた工程設計、生産技術を現場と一体となって作り上げる文化がある。したがって、製造現場を核とした設計、製造、保全といったエンジニアリングチェーン上のプロセス連携を、ICTを用いて効果的に行うことで、新たな飛躍のきっかけとなる可能性が高い。