一般社団法人インダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ(理事長 西岡靖之 法政大学教授、以下IVI)は、経済産業省が推進するConnected Industriesのための「Connected Industries推進のための協調領域データ共有・AIシステム開発促進事業」の課題設定型産業技術開発費助成金の交付決定通知を受け、製造業オープン連携フレームワークの開発を本格的にスタートします。
対象となる事業は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の公募によるもので、Connected Industries重点5分野を中心に、新たなデータエコシステムの構築に資する業界横断型AIシステムの開発と業界共用データ基盤の開発を通じて、国内企業にとどまらない幅広いデータ連携による価値の創出を促進することを目的とします。
IVIは、この中で、ものづくり・ロボティクス分野において、「製造業オープン連携フレームワーク(CIOF)によるデータ取引ビジネスモデル開発事業(以下、本事業)」を提案し採択されました。最長で2022年2月までの間、製造業に特化したより機密性が高く価値あるディープデータを対象として、企業間でのデータ取引を促進するためのシステム開発およびビジネスエコシステムを構築する予定です。
本事業は、国際標準でも取り上げられたIVIの参照アーキテクチャーに基づき、工場内にある価値あるデータをその知財を守った形で外部と流通させることを目的とします。本事業では、工場側を、株式会社ジェイテクト、DMG森精機株式会社、三菱電機株式会社、株式会社安川電機の4社が担当し、IT側をSCSK株式会社とビジネスエンジニアリング株式会社が担当します。また、フレームワークの基盤となるシステム開発と保守は、スタートアップ企業である株式会社アプストウェブが担います。
これまで、製造業の工場内部のデータを利活用し、外部の企業と密な連携を行うためには、提供するデータのセキュリティーの問題のみでなく、知的財産としてのデータの権利の帰属等の問題がネックとなっていました。また、実際に異なる工場間でデータをつなげるには、作り方の手順や用語がすべて異なり、意味が伝わらないという課題がありました。
IVIはこうした課題を、ゆるやかな標準辞書(注)を用いて解決し、同時にAIやブロックチェーン技術なども活用することで、データ取引の新しいビジネスモデルを提供可能なプラットフォームとして、新たなエコシステムを形成していく予定です。本年度は、2020年3月のリリースに向けて実証実験を進め、プロジェクトが終了する2022年には、国内外で100社以上のFA企業、IoT企業のシステムが利用可能なオープンで中立的なしくみを提供していくことで、この分野のデファクトスタンダードを目指します。
■IVI理事長 西岡 靖之からのメッセージ:
デジタルトランスフォーメーションが進むなかで、製造業の生産現場にあるデータを新たな知的財産としてとらえ、それをさらなる収益につなげる方法はたくさんあります。ただし、それを実現可能とするには、製造業がおかれた事情を考慮したデータ流通の新たなしくみが必要なのです。データの内部を秘匿し、さらにその権利を保持したままで、安心して社外にデータを提供するしくみができれば、製造業から見える現在の景色は激変するのではないかと予想しています。
■製造業オープン連携フレームワーク(CIOF)とは:
製造業オープン連携フレームワーク(Connected Industries Open Framework: CIOF)は、製造業の現場を起点とするデータを、あらかじめ登録されたソフトウェアを介して、特定の取引先や、社外の業務プロセスとダイレクトにつなぐことで、これまで以上に高付加価値な企業間取引を、信頼関係に基づくデータ取引により可能とするためのしくみです。
■ゆるやかな標準辞書とは:
IVIが提唱する“ゆるやかな標準”というコンセプトを具体化した辞書であり、CIOFで利用されます。ゆるやかな標準辞書は、連携する2つの当事者間で定めた任意の共通辞書と、利用者ごとに定義される個別辞書があり、これらの内容は常に変化します。ゆるやかな標準辞書は、多様な現場の特徴が表現でき、かつ似た用語はできるだけ共通化されるしくみを持っています。
■インダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ(IVI)とは:
IoT 時代におけるものづくりと IT の融合によって可能となる“つながる”ものづくりを、“ゆるやかな標準”というコンセプトをもとに実現することを目的として 2015年6月に設立された製造業を中心としたフォーラムです。IHI、オムロン、川崎重工業、神戸製鋼所、今野製作所、CKD、東芝、トヨタ自動車、ニコン、日本電気、パナソニック、日立製作所、富士通、武州工業、ブラザー工業、マツダ、矢崎総業など国内外で 260 社以上が参加しています。日本の製造業の強みであるカイゼンやPDCAサイクルなどその特徴を組み込んだ標準化モデル「IVRA」や導入メソッド「IVIM」、「スマート・シンキング」などをハノーバーメッセなど海外でもひろく紹介しています。(https://iv-i.org/)
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一般社団法人インダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ
事務局 藤元正、多田健児
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